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October 23, 2003

『ゲーデル, エッシャー, バッハ』ダグラス・R・ホフスタッター著

さて第二回は『ゲーデル, エッシャー, バッハ』 ダグラス・R・ホフスタッター著野崎昭弘・はやしはじめ・柳瀬尚紀(訳) 白揚社刊

アキレスと亀が、ある日、散歩の途中で出くわす。
亀: いい日だな、アキ公。
アキレス: まったくだ。
亀: いいところで会ったよ。
アキレス: 僕もそう思ったところさ。
亀: それに申し分ない散歩日和だし。このままぶらぶら家まで歩いて帰ろうと思ってね。
アキレス: ほんとかい? 歩くのが何よりいいらしいな。
亀: ところできみは近頃ずいぶん溌剌としているじゃないか、ほんとに。
アキレス: 嬉しいことをいってくれるね。
亀: そうかね。どうだい、葉巻を一本やらないか?
アキレス: きみも俗物だなあ。この地域では、オランダびいきはそうとうに趣味が劣るんだぜ、そう思わないかい?
亀: 同調しかねるな、この場合は。しかし趣味といえば、君の大のお気に入りの画家、M・C・エッシャーの『蟹のカノン』、このあいだとある画廊でやっと見たよ。たった一個のテーマ、それ自体が後ろにも前にも進む網の目を、あれほど美しく巧妙に仕上げたのにはまったく感心するね。しかし僕としてはバッハのほうがエッシャーより上だという気がいつもするんだ。
アキレス: どうかなあ。しかしひとつ確かなのは、ぼくは趣味の議論に頭を悩ませたりしないということだ。 De gustibus non est disputandum. [趣味を論ずること能わざるなり。]
亀: どんなふうなんだい、きみの年頃というのは? ぜんぜん悩み事がないというのは本当かい?
アキレス: 正確にいえば、杞憂《きゆう》がないね。
亀: 同じものだと思うがね。 アキレス: それが庭訓《ていきん》ならの話だが、たいへんな違いさ。
亀: おい、きみはギターを弾くんじゃなかったかい?
アキレス: ありゃぼくの友達だよ。あいつはしょっちゅう愚かな真似をするからな。しかしこっちはご免だ、要らんギターにさわるなんてのは!

(突然、蟹がとこからともなく現れ、片方のやや飛び出した黒い目を指差して興奮しながらやってくる)
蟹: やあ、やあ! どうしてるかね? 元気かい? 見えるだろう、このこぶ、この腫れあがり? 怒りん坊にちょうだいしたんだ。ふん! こんないい日だってのに。ぶらぶら公園を歩いててさ、イラン生まれのばかでかい男によじのぼったんだ - 身の丈三メートルの大男よ、いやまったく。こいつのところへすたこら行って、大空めがけてよじのぼり、やっと膝小僧を叩いて言ってみた。「失礼ながら、だんな、そのリュートの曲はマズルカでしたっけ、マズイナでしたっけ?」 ところが、ああ! やつはユーモアのセンスがないときた - これっぽっちもありゃしない - そしてガツン! - やつはおれさまをふり払い、目に一撃くらわせやがるじゃないか! おれさまの性格がそうなら何蟹《なにかに》かまわずカニャローッと怒るところだが、そこはわが種族の由緒ある伝統、おれは後退りした。要するに、われわれは前進するとき後退する。それがわれわれの遺伝子さね、ぐるぐるぐるぐるまわるわけだ。それで思い出した - いつも考えてるんだがね、「どっちが先にきたのか - 蟹か、遺伝子か?」つまり、「どっちがあとからきたのか - 遺伝子か、蟹か?」 おれはいつも、ものごとをぐるぐるまわしてみるんだよ。それがわれわれの遺伝子だな、要するに。われわれは、後退するとき前進する。おっとっとっ! そろそろ行かなくちゃな - なんせこんないい日和だ。蟹の人生をたたえて歌ってくれん蟹《かに》! ターター! オーレー!
(現れたときと同じように突然姿をくらます。)

亀: ありゃぼくの友達だよ。あいつはしょっちゅう愚かな真似をするからな。しかしこっちはご免だ、イラン・ギターにさわるなんてのは!
アキレス: おい、きみはギターを弾くんじゃなかったかい?
亀: それが提琴《ていきん》ならの話だが、たいへんな違いさ。
アキレス: 同じものだと思うがね。
亀: 正確にいえば、弓《きゅう》がないね。
アキレス: どんなふうなんだい、きみの年頃というのは? ぜんぜん悩み事がないというのは本当かい?
亀: どうかなあ。しかしひとつ確かなのは、ぼくは趣味の議論に頭を悩ませたりしないということだ。 De gustibus non est disputandum. [趣味を論ずること能わざるなり。]
アキレス: 同調しかねるな、この場合は。しかし趣味といえば、君の大のお気に入りの作曲家、J・S・バッハの『蟹のカノン』、このあいだとあるコンサートでやっと聴いたよ。たった一個のテーマ、それ自体が後ろにも前にも進む網の目を、あれほど美しく巧妙に仕上げたのにはまったく感心するね。しかし僕としてはエッシャーのほうがバッハより上だという気がいつもするんだ。
亀: きみも俗物だなあ。この地域では、オランダびいきはそうとうに趣味が劣るんだぜ、そう思わないかい?
アキレス: そうかね。どうだい、葉巻を一本やらないか?
亀: 嬉しいことをいってくれるね。 アキレス: ところできみは近頃ずいぶん溌剌としているじゃないか、ほんとに。
亀: ほんとかい? 歩くのが何よりいいらしいな。
アキレス: それに申し分ない散歩日和だし。このままぶらぶら家まで歩いて帰ろうと思ってね。
亀: 僕もそう思ったところさ。
アキレス: いいところで会ったよ。
亀: まったくだ。
アキレス: いい日だな、亀公。

おそらく、最も好きな本。

どうも無限という考え方が好きなようです。そこから進化とか永遠とか思考とか色々興味の枝が延びている。

NWNがきっかけで興味を持ったGNU(LexiconもGNUプロジェクト)。
この "GNU is Not Unix" 再帰頭字語というネタが、この本(GEB)にでてくるDjinn(ランプの精のジン)とGOD(神)の話に直結した。さらに長くなるけど面白いネタだから引用。

怪霊: よいかね、GOD は GOD Over Djinn を表す - これは「GOD Over Djinn, Over Djinn 妖霊の上にある妖霊の上の神」というふうに拡張しうる - そして今度はそれを「GOD Over Djinn, Over Djinn, Over Djinn 妖霊の上にある妖霊の上にある妖霊の上にある神」というふうに拡張しうる - 今度はそれをさらに拡張しうる……好きなだけ先へいけるわけだ。
アキレス: しかしどこまでいっても終わらないじゃないか!
怪霊: むろんそのとおり。GODをしまいまで拡張することはできない。
…中略…
アキレス: なるほど。つまり、神は妖霊《ジン》たちの梯子のてっぺんに鎮座したもうってことかね?
怪霊: いやいや、まるで違う! 「てっぺん」には何もない。なぜなら、てっぺんなどないからだ。だからこそ神は反復頭文字なのだよ。神は究極の妖霊《ジン》というようなものじゃない。神は任意の妖霊《ジン》の上位にある妖霊《ジン》たちの塔だ。

このネタを書いててひとつ思い浮かんだ!
NWN Welcomes Newbies(NWNは新規参入者を歓迎する)
そう、NWNは常に新たな人材を受け入れ無限に拡張される!
はっきりいってこの本を読むと人生が変わります。書きたいことは山ほどあるけれど、既に十分に長いので別の機会に。何度も読んでるからもうボロボロだ。この本は高校生、できれば高一の時に読むといいね。おそらく理解の限界を超えているだろうけど、後になってからもっと早く読みたかったと思うより、当時は理解できなかったけれど、こんなにすばらしい本を読んでいたのか、と後になって気がついたほうが良いと思う。
最後に、この本に出てくるボンガルド問題を発見。 http://www.cs.indiana.edu/~hfoundal/res/bps/bpidx.htm

Posted by geshi at October 23, 2003 12:13 PM [EDIT]

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